『日本三國』という作品をご存じでしょうか?
元々漫画なんですが、アニメにもなっていて、アマゾンプライムでご覧いただけます。
ざっくり説明すると、文明が崩壊した近未来の日本を舞台に、三つに分裂した国が、再び日本統一を目指す物語です。
題名の通り、日本を舞台にした「三国志」のような作品ですが、単なる戦争モノではありません。
政治、軍略、人材登用、組織の腐敗、権力者の器。
そうしたものが、非常に濃く描かれています。
登場人物も非常に魅力的です。
若く、才能あふれたイケメンが多いんですが、それだけではありません。
むしろ、酸いも甘いも経験したオヂたちが、判断力や胆力によって、結構な存在感を放っています。
その中で、最近私が特に気に入っているのが、龍門光英(りゅうもん みつひで)という人物です。

出典:松木いっか『日本三國』第5巻・第1話(小学館)
※人物造形を論評するため、必要な範囲で引用しています。
龍門は、大和という国で、辺境将軍という役職を担っています。いわば軍事面のトップ。
実際に優れた武人であり、人を見る目を持つ人物でもあります。
年齢は、上記の場面で52歳。
頭髪は、かなり薄い。
というか、明らかにハゲています。
私も現在50歳で、同じく髪の毛が薄い。
というか・・・
まあいいや。
まず、この時点で非常に親近感があります。
しかし、龍門に惹かれる理由は、もちろん頭髪だけではありません。
作中には、龍門とは正反対の権力者として、平殿器(たいら でんき)という人物が登場します。

出典:松木いっか『日本三國』第1巻・第1話(小学館)
これが超悪役なんですよ。「平」という姓が表す通り、あの頃(全盛期)の平清盛みたいな感じです。
もちろん私も、清盛を見たことはありませんけども。
役職は内務卿。いわば政治面のトップです。
ただ、この二人(龍門と殿器)を見比べると、同じように国を動かす立場にありながら、「権威」というものの成り立ちが、まるで違うことに気づきます。
その違いは、自分が、
「デブ」と言われた時と、
「ハゲ」と言われた時の反応に、
非常に分かりやすく表れています。
・・・
デブとハゲ。
令和の現代においてはどちらも「言ってはならない言葉」なんですけど、この作品は「文明が退化してしまった」近未来の話ですから。そこはいったん受け止めてください。
で。
平殿器は、権力者です。
頭も切れる。
政治的な駆け引きにも長けています。
しかし、その支配の根底にあるのは、恐怖です。
殿器に逆らえば殺される。
不興を買えば殺される。
実際、彼は「デブ」と言われただけで、あっさりと人を殺します。
「死罪死罪。五秒以内(に執行)や」というのが彼の代表的名言です。
MK5(マジで恋する五秒前)ではなく、MS5(マジで死罪の5秒前)なんですよ。恐ろしくないですか?
執行理由は「私をイヤ~な気持ちにさせたから」というんですから、裁判もくそもありません。
ただ、彼にとって、自分への侮辱は、単なる悪口ではないのでしょう。
そういった放言を許せば、自分の権威が崩れる。
だからこそ、些細な侮辱であっても、見逃すことができないんでしょう。
一方、龍門は、結構あっさりと「ハゲ」と言われています。
10歳の子供(平殿器の息子)からも言われています。
しかし、普通にスルーします。
怒ることもなければ、威圧することも、自分の権威を誇示することもありません。
なぜなら龍門にとって、自分がハゲていることは、何ら本質的な問題ではないからです。
まあ、そうやね。
実際、そうやし。
ハゲとるのは間違いないわな。
多分、そんな感じに思っているのでしょう。
でも。そんな事は。
国家を良くしていく事や、人を見る目、戦場での判断力とは何の関係もない。
おそらく龍門は、そう考えているのでしょう。
いいなあ・・・
と、私は思います。
権威とは、大声を出して相手を黙らせることではない。
逆らった人間を処罰して、恐れさせることでもない。
他人を下に置かず、自分の立ち位置も揺らがせない。
それこそが、本質的な権威なのではないでしょうか。
うーん。
この話、長くなりそうなので、次回以降に続きます。
とりあえず皆様。
この夏に是非
『日本三國』
ご覧になってみてください。
話はそれからです。
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