■1|「買ってくれそう」という気配に、商売人は弱い
不動産業をしていると、
「この人は買ってくれるかもしれない」
そんな空気を感じることがあります。
しかし、その期待が判断を鈍らせます。
言うなれば、“鏡が曇る”瞬間です。
今回は、その曇りに気づき、なんとか澄ませたことで助かったというお話です。
■2|介護事業を名乗った方に感じた、いくつもの違和感
ある日、高岡で介護事業を始めたいという方がお越しになりました。
事業用の物件を買いたいというご相談です。
以前のお客様からの紹介でしたので、私なりに丁寧に対応していましたが、
やり取りを重ねるにつれ、少しずつ違和感が積み重なっていきました。
売買が決まっていない段階で、残置物を「これとこれは残してほしい」と頼まれる
事業計画が曖昧
財務状況が弱い
話だけは大きいのに、資金計画がついてこない
そして極めつけが、次のお願いでした。
■3|物件価格を“上乗せ”し、差額をバックしてほしい
その方は、こう言われました。
「物件価格をもう少し高く設定できませんか?
その分を、事業資金として使いたいんです」
──これは完全にアウトです。
つまり、
売買価格を本来より高く見せかけ、
融資後に差額を私(売主側)からバックする
という依頼です。
これは、
実態と異なる売買契約書を作る
金融機関に虚偽の価格で申請する
事実上、事業用融資の詐取に加担する
という重大な問題につながります。
もちろん私は、その場で即座にお断りしました。
「できません。それは銀行をだます行為になりますので」
線を引くべきところは、はっきりさせておかないといけません。
もしここで判断を濁すような事をしていたら、
後々とんでもないトラブルに巻き込まれていたのは明らかです。
■4|案の定、融資は通らず、全てが破談
最終的に、銀行融資はやはり通らず。
物件の購入も白紙になりました。
一瞬だけ、
「売買がダメなら賃貸という方向もあるか…」
と揺らいだのも事実です。
しかし、そのすぐ後に浮かんできたのは、
“澄んだ目で見れば、この方に物件は貸せない”
という当たり前の道理でした。
その後、介護事業の開業自体が中止になったと聞きました。
従業員の方には大変気の毒な話ですが、
ここは私がどうこうできる問題ではありません。
私にできるのは、
できることは精一杯やる
できないことは、できないと言う
この2つだけだからです。
■5|義理や人情ではなく、「道理」で動くということ
不動産業をしていると、
「これくらいいいんじゃないの?」
「そんな、冷たいこと言わんといてよ」
といった“情”の揺さぶりに遭うことがあります。
しかし、義理や人情で判断してしまうと、
たいていの場合は後でしわ寄せが来ます。
だから私は、
義理や人情ではなく、道理と実情を見る
という姿勢を大切にしています。
それが最終的に、
自分を守り、
取引を守り、
お客さまを守ることにつながるからです。
■6|最後に
今回の件であらためて感じたのは、
不動産屋に求められるのは“義理人情”ではなく、
曇りのない判断力 だということです。
本当に大事なのは、
やっていいことと、いけないことを区別する力。
たとえ「義理の分からん人だ」と言われても、
道理に反する話は受けません。
たとえ「人情の無い人だ」と言われても、
人情の裏に隠された“実情”で判断します。
それが、私の仕事だからです。
最後に。
今回の件は、確かに「なーんか怪しいなあ」と思っていました。
しかし、憶測で人を決めつけるわけにはいきませんし、
ご紹介いただいたお客様に対して
「あの人、怪しいので気を付けた方がいいですよ」
とは言えません。
言い訳になるかもしれませんが、
それが私の職業倫理であるとご理解いただければ幸いです。
冷たいですかね?「そんな、怪しいと思ったんなら、教えてあげなよ!」
と思う方もいらっしゃるかも知れません。
でも、忘れて欲しくない事があります。
それは
「髙野は、確かに冷たい」という事です。
なんせ、義理も人情も捨てた男。ですから!
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